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ガラスで日常に彩りを。<アトリエ三春>のささやかな願い【後編】

2024.06.17. Mon.

新潟市 アトリエ三春

年に一度、NIIGATA越品ステージで手に取ることのできる<アトリエ三春>のガラス製品。いくつものガラスを重ね、高温で熱することで模様を描き出すフュージングと呼ばれる繊細な加工技法で生み出されています。作っているのはガラス作家の照井清子さん。新潟市秋葉区にある工房を訪ねました。

出会いは、偶然の積み重ね

「三春は、桃と梅と桜が一斉に咲く函館の情景から名付けました。今はもう別々に咲くようですけど、子どもの頃は今以上に冬の寒さが厳しくて。その分、春の訪れにワクワクしていたから、狂い咲きって楽しいなと思って」。そう朗らかに話すのは、アトリエ三春のオーナー照井清子さん。出身は北海道。実家は代々続く陶器店を営んでいました。

 

美術系の専門学校を卒業後、群馬県にある上越クリスタル硝子株式会社のデザイン室に入社します。「正直に話すと志望していた学科の試験に落ちてしまって、浪人しないために美術学校に入りました。就職したのも、就職難の中でたまたまご縁があったから。当時は、ガラスに特別な思い入れがあったわけじゃなかったんです」。

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▲カラフルな箸置きは、生活に取り入れやすいアイテムの一つ

その後、清子さんは人手が足りないからと実家の陶器店を手伝うことになり、上越クリスタル硝子を2年半で退職。程なくして結婚し、パートナーの実家がある新潟県に移ることになります。「これからどうしようかと考えて、ガラスで器を作ってみたいと思ったんです。それで、吹きガラス職人だったパートナーと工房を立ち上げました」。

 

日本では、工房を構えて活動している個人のガラス作家がほとんどいなかった時代。海外の事例を参考に、電気釜とガラスを仕入れて独学で技術を習得。全国各地のギャラリーで作品展を開き、販路を拡大していきます。徐々に、お客様から「こんなものを作ってほしい」と要望を受けるようになり、ラインナップがどんどん増えていきました。

 

作る楽しさも、越品と共に

NIIGATA越品との出会いは新潟伊勢丹での作品展。当時のNIIGATA越品バイヤーが、7階に展示されていたアトリエ三春の作品に惚れて、工房まで足を運んだことがきっかけです。

 

「バイヤーさんから製品づくりのアイデアをいただくことも多くて、作品の幅が広がりました。『新潟伊勢丹で見ました』と、工房に足を運んでくださるお客様もたくさんいらっしゃいます。新潟で新潟の品を紹介してくださるのは、作り手にとってもお客様にとっても程よい距離感なんでしょうね。反応を直接受け取ることができるのは本当にありがたいです」。


工房では、器やアートパネルの制作体験も実施している清子さん。取材に同行していた新発田バイヤーは、いつかNIIGATA越品ステージで制作体験会を開きたいとこれからの展望を語りました。「ちょうどリアル店舗の付加価値を高めたいと考えていたところでした。さらなるワクワクを届けられる場所にしていくために、作り手の皆さんと一緒に盛り上げていきたいですね」。

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▲県外からも参加者がやってくる大人気の制作体験「クリスマスオーナメント」の作品

生活に小さな楽しみを増やしたい

今年のポップアップストアは、6月19日(水)からNIIGATA越品ステージにて開催されます。毎年人気の風鈴はもちろん、ペンダントや一輪挿しのフラワースタンド、額縁に入った招福猫のアートパネルなどが並ぶ予定です。色や形のバリエーションも豊富に取り揃え、選ぶ楽しみとともにお届けします。

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▲個性豊かな風鈴。「見た目はもちろんですが、音も一つひとつ違います。見て、聞いて、じっくり比べてみて、お気に入りを見つけていただけるとうれしいです」

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▲新作のペンダントは大ぶりでゴージャス。全てが一点ものです

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▲一輪挿し用のフラワースタンド。色のバリエーションだけでなく、円、半円、台形、正方形とさまざまな形があります。一輪挿しを想定した商品ですが、キッチンに置いてハーブを保管するために使っている方もいるそう

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▲ガラス細工の招福猫。「お正月の縁起物としてだけでなく、合格や長寿のお祝いの品としてお買い求めくださる方もいらっしゃいます」

色鮮やかで立体的な商品が多いアトリエ三春ですが、「作っているのは芸術作品ではなくてあくまで普段使いできる日用品」だと話す清子さん。

 

「使うのはもったいないとおっしゃる方も多いんですけれど、私からしたら飾っておくほうがもったいない。ガラスは色も匂いも移らないし、割れさえしなければいつまでも美しいまま使えます。だから、積極的に普段使いして欲しい。そうして、手に取ってくださった皆さんの暮らしにほんの少しでも楽しみが増え、日常が華やかになってくれたらうれしいなと思います」。

 

 

<取材後記>

一つあるだけで、パッと空間が華やぐアトリエ三春のガラス製品。取材の合間に、白い椿と緑の葉のコントラストが美しい、好みのお皿を見つけました。でもなぁ…と悩んでしまった私の心を見透かすかのような清子さんの言葉が忘れられません。「自分には使いこなせないとおっしゃるお客様もいます。こんなカラフルなお皿に何を盛ったらいいのって。だけど、どう使うかを考えることも生活に楽しみを増やす一つの方法だと思うんです」。つい利便性や使いやすさばかり考えてしまいますが、心のときめきに素直になるのも大切なこと。私は、せっかく訪れた生活を楽しむチャンスを見て見ぬふりしていたようです。ポップアップストアに行かれる方は、一期一会の出会いを逃すことなくワクワクをお持ち帰りくださいね。

 

 

アトリエ三春

〒956-0833 新潟県新潟市秋葉区草水町2丁目12-32

電話:090-2675-8507

 

取材・文章:鵜野梨奈(ザツダン株式会社)

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