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まだ見ぬ表現を求めて。驚きと感動を届ける<田中刺繍>という新ジャンル【後編】

2024.03.27. Wed.

五泉市 五泉之田中刺繍

刺繍を施すだけにとどまらず、糸を選んで素材となる紐を編むところから手がけている田中刺繍。刺繍屋の本分を超えて自由な表現力を得られたのは、共にものづくりをする仲間の期待に応え、切磋琢磨してきた結果でした。

始まりはミシン一台のワンポイント刺繍

田中刺繍の創業は昭和40年のこと。「刺繍屋の娘だった母がミシン一台を持って独立。父と2人で、地場のニッターさんたちからアパレル商品のワンポイント刺繍の仕事を受けていたと聞いています」と話すのは二代目の田中守さん。当時は家が刺繍工場のようなもので、守さんたち三姉弟(トップ画像向かって左から、長姉の小島裕子さん、長男の田中守さん、次姉の神田玲子さん)はミシンの音ともに育ったのだそうです。「体操着袋は母が刺繍で名前を書いてくれていましたね。ついでに描かれていたお花の刺繍は得意な柄だったのだと思います」と玲子さん。

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▲田中刺繍と最初の一歩をともに踏み出し、今なお現役で活躍している刺繍用ミシン

徐々に仕事が増えて工場の規模も拡大。最大で35名ほど在籍していた時代もありました。「20年ほど前にアパレルブランドでコード刺繍が流行ったんです。ニットに使っているのと同じ糸で作った紐をデザインに使いたいから作ってくれないかって相談されて、それで父が紐編み機を導入。しかもたくさん買い込んで(笑)。その後ブームは落ち着いてしまうんですが、機械はあるし、しょうがないから自分たちでデザインしてアパレルメーカーさんやデザイナーさんに提案に行こうかと。そこから、自社商品を作るようになりました」と守さん。

 

「父は会長になった今も、機械を動かし新技術の開発に熱中しています。まだまだ現役」と笑う玲子さん。デザイナーからの要望や期待に、なんとしてでも応えようとした先代の熱意が現在の田中刺繍らしさの基礎となりました。

 

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▲これはニットセーターの一部分。写真上部にはコード刺繍による加工が施されているのですが、セーターの身ごろと同じ糸で作った紐が使われています

距離の近さがアイデアを加速

田中刺繍の探究心を支えているのは先代の熱意だけではなく、横のつながりも大きいといいます。「五泉市はニットの産地であり、織物の産地でもあるのでたくさんのメーカーさんが近くにいます。そんな皆さんとものづくりをしてきたからこそ、技術の幅が広がったなと思います」と守さん。玲子さんも、「近くにいるからすぐ相談ができるし、何か作ろうよと声をかけやすいんです。意見交換から新しいアイデアが浮かんだりして、本当に良い刺激になっています」と話します。

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▲もう再現することのできない幻の技術から生まれた刺繍の布地

続けて、越品バイヤーからもたくさん刺激を受けていると教えてくれた玲子さん。実は、TSUNAGUシリーズの御朱印帳は越品バイヤーの発案で開発が始まった商品。そのほかにもお客様のニーズに合わせて季節を意識した商品展開を提案するなど、企画パートナーとして良好な関係を築いています。また、実店舗を持たずEC販売が中心の同社にとって、越品ステージの店頭でお客様の声を聞く機会が非常に貴重だと話します。「『去年も買ったのよ』なんておっしゃるリピーターさんに会うと励みになりますし、『こんな色が欲しい』と直接ご要望をいただけるのもありがたいです」。

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▲展示会用に作り続けてきた刺繍見本の一部。技術とアイデアの宝庫です

越品とともに、さらなる開拓を

この春、田中刺繍と越品のスペシャルコラボレーションが実現。3月20日(水・祝)から開催される「NIIGATA越品ファッションウィーク」にてPOP UPショップの開催が決定しました。普段から越品ステージで人気のハンカチはもちろん、これまでは店頭で手にすることのできなかったTSUNAGUシリーズの名刺入れ、今春の新作となる「さくら刺繍ストール」など、田中刺繍の魅力を存分に味わえるイベントとなっています。

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▲ショートストールは柄や色だけでなく、糸の太さや種類の異なるさまざまな型が店頭に並びます。「邪魔にならずさっと巻くだけさまになるよう、長さを何度も調整しました。ぜひ一度、試着していただきたいです」と玲子さん

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▲桜の花びららしさの表現に苦労した新作「さくら刺繍ストール」は、テープと3種類の糸で刺繍が施されています。左右の柄が違うのも注目ポイント。ホワイトとピンクの二色展開です

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▲TSUNAGUシリーズの名刺入れは全部で13色展開。光沢のある上品な紐は、名刺入れのために編み上げたオリジナル。手に持って使うものだから、触り心地にもこだわっています

商品を手に取るお客様にも、共にものづくりに励むデザイナーやメーカーの皆さんにも、驚きと感動を届けることを企業理念に掲げる田中刺繍。最後にこれからの目標を伺いました。

 

「父譲りなのか、私も『できません』といいたくないんです。機械の劣化や故障、糸の廃盤で、どうしても作れなくなるものが出てきます。それでも、作りたいものがある人をがっかりさせたくないから、せめて技術だけは残したい。うちでできることを減らさないために努力し続けたいなと思っています」。

 

 

<取材後記>

プリントされていたり、柄布だったり、編み込まれていたり。布製品の表現はさまざまありますが、刺繍が施されているとうれしくなるのは私だけでしょうか。今回の取材でそのわけが一つ解明されました。それは、刺繍の一針一針に作り手の想いが宿っているからだということ。どんなに機械化が進んでも、糸の組み合わせや針の運びを考えるのは人です。きっとその存在感とぬくもりが、刺繍の魅力。この手触りはオンラインでは伝えきれないので、ぜひ店頭で確かめてみてください。

 

 

有限会社田中刺繍

〒959-1834 新潟県五泉市木越1158番2

電話:0250-43-4532

 

取材・文章:鵜野梨奈(ザツダン株式会社)

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