すべて買う人の立場で考える。<角上魚類>のおいしさの秘密【前編】
2023.12.15. Fri.
長岡市 角上魚類
新潟県と関東圏を中心に、新鮮な旬の魚を豊富に取り揃えた鮮魚専門店を展開する<角上魚類>。その自慢の逸品がNIIGATA越品オンラインストアから購入できるようになりました。時には渋滞ができるほど多くのお客様で賑わう<角上魚類>の人気の秘密を探るべく、寺泊魚の市場通りにある1号店を訪ねました。
常識を覆すほどの鮮度
「創業者の現名誉会長は、元々は漁業経営者でした。鮮魚の卸売を生業とする網元でしたが、ある時スーパーに並ぶ魚を見て『俺が仕入れればもっと手頃な価格で売れるじゃないか』と気づき、商売を始めたと聞いています」と教えてくれたのは、通信販売部課長の大久保孝通さん。
鮮度の良さ、価格の安さで人気となり、少しずつ口コミが広がってお客様が増え、寺泊の海岸通りに1号店をオープン。最初は、この場所に他のお店はなかったと言います。今では寺泊魚の市場通り(通称、魚のアメ横)と呼ばれる一大観光地として栄えていることは、新潟県民ならご承知の通り。「何もなかった地域が栄えたことが弾みになったんでしょうね。関越自動車道の開通を受けて、群馬県高崎市に2号店を出し、県外へも鮮魚を届けるようになりました」。現在では関東圏を中心に22店舗の鮮魚専門店を運営しています。
▲角上魚類のEC販売を担当する2人(写真右から大久保孝通さん、小池真暉さん)
大久保さんと共に通信販売部に所属する小池真暉さんは「正確な資料はありませんが、鮮魚の保冷・運搬に発泡スチロールの箱を使用したのは、おそらく角上魚類が最初です」と話します。それまでは鮮魚の運搬には木箱を使うのが一般的でしたが、木箱では鮮度を長く保つことはできません。なんとか鮮度を維持したいと考え、目をつけたのが冷蔵庫の断熱材として使われていた発泡スチロール。おかげで、当時たくさん獲れていたいかも鮮度の高い状態をキープしたまま運搬できるようになりました。
「新鮮ないかは表面が黒いものなのですが、高崎に届けたところ『状態の悪いものを送ってくるな』とお叱りを受けたそうです。それまで地元の皆さんは鮮度の落ちた白いいかしか見たことがなかったんですね」と、微笑む大久保さん。同社の店舗出店をきっかけに地元民の食習慣が変わり、鮮魚が食卓に並ぶ頻度が上がったことを受けて、高崎市から表彰を受けたと言います。
鮮度の秘密は、売り切り力
同社は「日本一の魚屋」を目標に掲げています。この日本一とは、売上高や店舗数のことではなく、魚屋としての質の高さを指すそうです。社心(角上魚類の社訓に相当するもの)に掲げているのは、「買う心、同じ心で売る心。」。自信が持てる品揃えにこだわり、自分が買いたいと思うレベルの商品を常に提供しています。
社心とともに社員が大事にしている思いである「4つの良いか」も教えてくれました。それは、「鮮度は良いか、値段は良いか、配列(品揃え)は良いか、態度は良いか」です。店舗に行くと、いかに理念が体現されているかがよく見て取れます。
▲分厚くカットされた新鮮なお刺身が所狭しと並びます
▲丸のままの魚は、無料で用途に合わせた加工を施してもらえます
▲店舗一番人気だという「四色丼」。店内を物色している間に、あっという間に完売してしまいました
一般的なスーパーの鮮魚コーナーや鮮魚店の廃棄率が5%~10%のところ、同社では驚異の0.05%以下を維持しています。その秘密は、売り切る力の強さ。「さまざまな食べ方を楽しんでいただけるように1種類の魚でも丸のまま、切り身、刺身、加工品と売り方にバリエーションを持たせています。また、ただ並べるだけではなく、味の特徴やおいしい調理方法を伝え、お客様とコミュニケーションを取りながら販売します。売れ行きが鈍いと感じたら、すぐにお惣菜に加工。とにかく、その日のうちに売り切ることを徹底しているんです」と小池さん。どれもこれも、鮮度の高いうちに商品を届けるための徹底した工夫です。
▲惣菜コーナーも大人気。お昼時だったこともあり、次々と商品が売れていきました
バイヤーの目利きと連携が値段を決める
仕入れにおいても、独自のこだわりがあります。同社では、バイヤーが新潟中央卸売市場と豊洲市場の2箇所に分かれ、それぞれの市場から全国各地の海産物を仕入れます。毎朝、連絡を取り合ってその日一番お手頃で質の高い旬の魚を仕入れ、各店舗へと発送。特徴的なのは、バイヤーに商品選定の大きな権限があることです。
「一般的なスーパーでは、店長が仕入れ希望を出し、認知度の高い魚だけを販売しますが、うちの場合はその日市場に並んでいた旬の良いものをバイヤーが店舗に送り込みます。お客様が知らないような魚でもバンバン仕入れて、その分、店頭で丁寧に説明をする。昔ながらの魚屋のようなライブ感を大切にしているんです」と小池さん。価格を抑えるためにバイヤーに権限を持たせる仕組みが、あまりお目にかかれない珍しい魚に出会えるという新たな付加価値を生み出していました。
▲「実は鮮魚だけでなく漬け魚などの加工品も人気なんですが、おいしさを追求するために今年(2023年)8月に自社加工センターを新設しました。年末にお買い求めになる皆様へのお届けに間に合わせたくて、急ピッチで人員や機械を手配。この夏は忙しかったですね」と大久保さん
後編では、角上魚類自慢の加工食品へのこだわりや、次に目指すビジョンについてご紹介します。
角上魚類ホールディングス株式会社
〒940-2502 新潟県長岡市寺泊荒町9772番地20
電話:0258-75-3181
取材・文章:鵜野梨奈(ザツダン株式会社)
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