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引き算と足し算を駆使して、感動を生み出す<タケダ>の金属雑貨【後編】

2023.11.17. Fri.

燕市 タケダ

創業から60年、金属の切削加工一筋で機械部品などの受託製造に邁進してきた<タケダ>。「自分たちで完成品を作りたい」という思いを実現するべく、2008年に「TAKEDA DESIGN PROJECT」を立ち上げました。技術力とデザイン性を武器に、まだ見ぬ切削加工の可能性を切り開いています。

新天地開拓のカギは、デザイン性の足し算

タケダに入社してすぐに社長から自社製品の開発を任された企画開発部部長の高地雅之さん(トップ画像向かって右から、高地雅之さん、社長の武田太一さん、営業部課長の児玉鋭之さん)。何を造るかも決まっていない中、まず前職で面識のあったプロダクトデザイナー、秋田道夫さんへの協力を依頼しました。

 

「燕三条には当時、キッチンツールやカトラリーのファクトリーブランドがすでにいくつかありました。後発の我々が同じような商品を開発しても販路拡大は難しい。さらに切削加工という技術はどうしてもコストがかかるため、付加価値を高める必要もありました。そこで技術力とデザイン性を掛け合わせた製品を造ろうと考えたんです」と高地さん。

 

まずは秋田さんを工場に案内し、タケダの技術力を見てもらいました。三角錐や四角柱などいくつか削り出し加工のサンプルを造り、秋田さんが出した答えは「テープカッター」。本体もドラムも刃も、全てを一つの塊から削り出す意外性に加えて、金属の塊ならではのウェイトがあり機能性も兼ね備えたアイデアです。ここから、トレイやペンスタンドをはじめとするステーショナリーのラインナップを揃えて販売することに決めました。

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▲フラッグシップ商品として最初に完成した「テープカッター」の製造工程。手前にある金属の塊から削り出して形を造っていきます

「最初に参加した文具の展示会では、『なにこれ?!』と驚かれたことをよく覚えています。プラスチックや紙、木製品の中に、金属の塊を並べた我々のブースは異質でしたからね」と笑う武田さん。文具にしては高価な商品でしたが老舗百貨店から注文を受け、少しずつ販路を拡大。現在では40点以上を展開する一大ブランドとなりました。

 

高地さんに次の目標を伺うと、こんな答えが返ってきました。「ブランドラインが違っても統一感のあるデザインを保っているのがTAKEDA DESIGN PROJECTの強み。今は机上用品がメインですがキッチン、リビング、玄関…と生活の各シーンを彩る製品を造っていき、いつか1軒丸ごとタケダの金属雑貨でコーディネートしていただきたいです」。

 

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▲TAKEDA DESIGN PROJECTのプロダクトたち

地域が育んでくれた、協働の精神

タケダの地元である燕三条地域は、訪問しやすい範囲に多彩な技術を持つメーカーが集まっており、非常にコンパクト。小規模な企業も多く、小ロットの依頼でも快く受けてくれるため、連携が取りやすいのだと話す武田さん。工場同士の仲の良さは、分業制で発達してきた地場産業の成り立ちに影響を受けているのではと推測します。「ここでは昔から、プレスや洗浄など工程ごとに工場を移動しながら製品ができあがっていきます。だから、今でも扱う素材や技術の垣根を越えて、工場同士の横のつながりが生きているのだと思います」という言葉の通り、同社も社内でできない工程は地域の工場に依頼。課題にぶつかったとき、社外の人に素直に頼ることのできる社風は、燕三条の地域性が育んだものかもしれません。

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▲鍛造工場で打ってもらったものに、ねじ切り加工を施した部品。地場の工場と協力しながらものづくりをしています

「実は、NIIGATA越品がスタートする前から伊勢丹さんにお世話になっています」と武田さん。同社は紳士の小物売り場で販売していたメジャーがきっかけとなり、NIIGATA越品に仲間入り。今では年に一度、ポップアップイベントを開催しています。「越品に置いてありましたね」と言われることも増え、認知拡大につながっている実感があるそうです。

 

一方で、営業部の児玉さんは「商品を単体で展示しただけでは用途や技術力が分かりにくく、製品の魅力が十分に伝わっていないのでは」と危惧していると言います。この発信力や営業力を強化すべく、2023年の夏、大きな一手を打ちました。

60周年を迎え、更なる飛躍を目指す

それが、2年の構想を経て8月に完成した新オフィス「HEAD SQUARE(ヘッドスクエア)」です。金属加工技術の企画展示を行うホワイエ、出荷前の加工作業や品質管理を行うラボ、開発部や営業部などが集うオフィスの3つの機能を備えた建物になっています。「裏手に工場を新設して、ゆくゆくは切削加工の工程も気軽に見学できるような発信拠点にしていきたいと考えています」と武田さん。

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▲業界関係者だけでなくエンドユーザーにも関心を持ってもらうために、スタイリッシュな見た目にこだわりました

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▲ホワイエでは、燕三条の金属加工技術に関する企画展示が行われています

発信力を高めるために、「TAKEDA DESIGN PROJECT」内でも新たな動きが始まっています。社内スタッフが企画開発やデザインに挑戦したブランドを立ち上げたのです。「コンセプトは『日々の暮らしに“上質”を』。できそうにもないアイデアがたくさん出ていますけど、工場のスタッフも一緒になって悩みながら進めています」と児玉さん。第一弾として歯ブラシスタンドとチューブスクイーザーを商品化予定です。

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▲ブランド名は「Laugh Lagu(ラフラグ)」

切削加工の技を磨き、地場産業やプロダクトデザイナーと協働してものづくりに励むタケダ。武田さんが目指すのは、今も昔も変わらず「感動」を生むものづくりです。

 

「そのために、人が集まり情報交換や対話ができる場を用意しました。ここで発信をしながら自分たちも刺激を受けて、切削加工の技術力で今まで以上に皆さんに感動をお届けしたいと思っています」。

 

<取材後記>

切削加工は「削る」というシンプルな動作で、直線や曲線を造る、溝を彫る、穴を開ける、鋭く尖らせるなど、さまざまな造形を生み出すことがきます。理解していたつもりですが、工場を見学して「本当に削るだけなんだ!」と驚いた自分に一番驚きました。まさに、百聞は一見に如かず。HEAD SQUAREに工場が併設された折には、ぜひ多くの方に見学に行っていただきたいです。11月22日~28日にかけて開催される「燕の良いモノがたり」では、売り場にタケダの社員が来られるそうです。ぜひ、シンプルな見た目にこれでもかと詰め込まれた機能性と技術力を聞きにいらしてください。

 

 

株式会社TAKEDA

〒959-1201 新潟県燕市灰方664番地(HEAD SQUARE)

電話:0256-64-7420(企画開発室)

 

取材・文章:鵜野梨奈(ザツダン株式会社)

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