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針と糸と、遊び心と。<塚野刺繍>が描き出す、刺繍の未来【前編】

2023.10.04. Wed.

五泉市 塚野刺繍

本物の植物のような生命感と、絵本のようなあたたかさを兼ね備えた、刺繍でできた観葉植物。塚野刺繍が手掛ける「embroidery cozy plants」は、60年培ってきた技術力と丁寧な手作業によって生み出されています。

繊細さと温もりが魅力の刺繍作品

細部にまでこだわった美しい刺繍製作を得意とする塚野刺繍株式会社。国旗や星座、動物といった王道のモチーフから、目玉や昆虫などの変わり種まで200種類もの個性的な刺繍を施した「アソビボタン」や、一本の糸から作り上げた刺繍のアクセサリー、指先で糸と布の立体感を楽しめる「ししゅうのえほん」など、多彩なオリジナル商品を展開しています。NIIGATA越品の当初からさまざまな作品を取り扱っていますが、現在特におすすめなのが刺繍の観葉植物「embroidery cozy plants(エンブロイダリーコージープランツ)」です。

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▲「ししゅうのえほん」シリーズの新作は、ふしぎの国のアリスがモチーフ

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▲刺繍の観葉植物は、付属のアロマボールにオイルを付ければ香りも楽しめます

「本物の植物と違ってお世話の必要がないので、病院や介護施設にいる方への贈り物にも喜ばれていますし、小さなお子さんやペットのいるご家庭でも手軽に植物を楽しめます。これからLOPIN(ロピン)というブランド名で、四季折々のラインナップを増やしていく予定です。プリザーブドフラワーに並ぶ選択肢として、たくさんの方に手に取っていただけたらうれしい」と教えてくれたのは、専務取締役の塚野友恵さん。工場で手を動かす職人の一人であり、オリジナル商品の企画開発、販売も担う塚野刺繍のブレーンです。

 

細やかに丁寧に、命を吹き込む

刺繍の観葉植物の製作工程を見学しました。刺繍加工機の説明をしてくれたのは、代表取締役の塚野毅之さん。「創業当社から本縫い、環縫い、コード刺繍など、刺繍と呼ばれるものは全て請け負い、いくつもの機械を揃えていました。ですが、6年前の工場移転を機に厳選。今は15色の多頭刺繍機を主軸に、ごく普通の一般的な本縫いができる機械のみを置いています」。

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▲1台に15色分の針と糸が6頭付いている多頭刺繍機

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▲針の位置が固定されており、刺繍台がデータに従って動く仕組みは家庭用ミシンと似ています

プリントされた絵と刺繍の大きな違いは、糸による凹凸があること。「データとして取り込んだ平面のイラストをもとに、糸の向きをどうデザインするかが腕の見せ所です」と毅之さん。糸を走らせる向きと密度によって仕上がりが大きく変わります。色鉛筆で塗る感覚に近いと言いますが、糸は太さを変えられない上に一筆書きで仕上げるという制約があるので、難度はグッと上がります。「データ上ではきれいでも、刺繍してみると布にしわが寄ってうまくいかないこともあります。機械のクセや布との相性を見ながら、何度も微調整を加えて良い塩梅を探していくんです」。

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▲機械に入力するデザインデータ

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▲「使っている糸は葉と葉脈の2色のみ。光の加減や角度によって見え方が変わるのは刺繍の武器」と話す毅之さん

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▲試行錯誤の末、裏側もきれいに見える糸の運び方を編み出したそう

刺繍が終わると今度は友恵さんの出番。縫い上がった葉を一枚ずつ切り離していきます。ここからの行程は全て手作業。「一つ作り上げるのにもかなりの時間がかかります。機械による刺繍の繊細さだけでなく、手作業の細やかさもぜひ感じ取ってほしいです」と友恵さん。

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▲刺繍を傷つけないよう、刃物ではなく熱で余分な布を焼き切ります

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▲熱に強いレーヨンの糸で刺繍しているので、葉の部分は溶けないのだそう

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▲茎も一つ一つ手作業で縫い留めます

積み上げてきた技術力が遊び心で花開く

塚野刺繍が工場を構える五泉市には、現在5軒の刺繍業者がいます。「五泉はニットの産地なだけあって刺繍屋も多かったんですよ。全盛期には20軒以上ありました」と毅之さん。安価な輸入製品の台頭で、国内のアパレル産業が停滞すると同時に、婦人服の刺繍加工を主力にしていた刺繍工場は廃業に追い込まれました。そんな厳しい状況のなか、塚野刺繍が始めたのがオリジナル商品の開発です。

 

「仕事がなくて暇なもんだから、社員が『今日、何しますか?』って聞いてくるんですよ(笑)ちょうど、知り合いのデザイナーさんと一緒にものづくりがしたいねと話していたこともあって、アソビボタンという自社ブランドを立ち上げてみることにしました。仕事がない不安からというよりは、『暇だしなんか作る?』っていう遊び心が始まりでしたね」と友恵さん。

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▲ファクトリーショップにはところ狭しと刺繍のオリジナル商品が並びます

当時は、五泉産地内で自社ブランドを展開する例は少なく、ファクトリーブランドの走りとなった塚野刺繍。2012年に開催された第一回日本カワイイ博 in NIIGATAにアソビボタンで出店したことを機に、地域のイベントへ出向き対面販売を始めます。「イベントに出る刺繍屋さんなんて、当時はほぼいなかったでしょうね」と笑う友恵さんですが、そのおかげで越品バイヤーは塚野刺繍と出会うことができました。

 

後編では、次々と新商品が生まれる理由、新たな可能性を切り開く若い力についてご紹介します。

 

 

塚野刺繍株式会社

〒959-1836 新潟県五泉市南本町2丁目1番61号

電話:0250-47-4173

 

取材・文章:鵜野梨奈(ザツダン株式会社)

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