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灯すのは、大切な人を想う気持ち。<小池ろうそく店>が現代につなぐ花ろうそく【後編】

2023.07.24. Mon.

新潟市 小池ろうそく店

花が咲かない冬に仏花のかわりとして使われてきた「花ろうそく」。新潟市江南区の小池ろうそく店は、花ろうそくを現代の人々に広めることで、誰かを大切に思う気持ちも伝えていきたいと考えています。そんな願いのもとで誕生したのが「花丸ろうそく」です。

かわいい「花丸ろうそく」の誕生

手のひらサイズのぽってりとしたまんまるフォルム。一見すると和菓子のようにも見えますが、これもれっきとしたろうそくです。開発したのは、小池ろうそく店の小池深香さん。「はぜろう、みつろうなどの自然由来の植物ろうを使い、灯心は和紙にい草を巻いたもの。和ろうそくの素材をそのまま使っています。丸くしたのは、かわいいから。若い人に親しんでもらいたかったんです」。

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▲ゆり(手前)とあじさい(奥)の製作途中の花丸ろうそく。デザインは全10種類

花ろうそくと同じように季節の花が描かれていますが、バラやひまわりといった和のモチーフとして選ばれることが少ない花もラインナップ。仏壇やろうそく立てがない家でも、ろうそくの灯りを楽しむことができます。「丸くなると炎の燃え方が変わるので、試行錯誤しながら開発期間は1年以上。芯の長さ、素材、サイズなど、最適なバランスを見つけるのに苦労しました」。

 

花丸ろうそくは、2020年の全国推奨観光土産品審査会で、国土交通大臣賞(グローバル部門)を受賞。新潟の新しい工芸品として注目を集めています。「ライフスタイルや宗教を問わず、花ろうそくの文化に触れてもらいたいと思って作ったので、たくさんの人に喜んでいただけるのがうれしいです」。

 

越品を通じて、若い人のもとへ

そんな小池ろうそく店とNIIGATA越品の出会いは2020年。深香さんの父、小池孝男さんによると意外な人の助言があったそうです。「取引先のお寺さんが、“越品に出したらどう?”と言ってくれたのがきっかけでした」。新潟伊勢丹では、越品ステージの売場拡大の準備を進めていた時期です。商品ラインナップ拡充のために新しいアイテムを探す中で、小池ろうそく店の花ろうそくも、ぜひ越品に加わっていただきたいと注目していたところでした。

 

「タイミングがとても良かったですね」と振り返る孝男さん。NIIGATA越品での取り扱いが始まってからは、深香さんの周りでも変化が起こったそうです。「越品で見たよ、知っているよ、と言ってくれる人が増えました。学生時代の友達や先生からも反響があります」。

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▲ろうそく立てが不要。不燃性の皿などにのせて使えるので、気軽にろうそくの炎を楽しむことができます

特に花丸ろうそくは、若い人たちにも興味を持ってもらう機会が増えたと言います。「色々な年代の方が行き交う1階の越品ステージで販売したことで、仏具売場に足を運ばない人たちにも花丸ろうそく知ってもらうきっかけになりました。“かわいい”と手に取ってくれる人も多いですね」。

花ろうそくで新潟の魅力を発信したい

仏具というカテゴリーをこえて、新たなジャンルを築いた花丸ろうそく。次世代を担う絵師として、深香さんはどんな未来をめざすのでしょうか。「うちで一番年上の絵師が70代。世代交代と技術継承を進めていくために、この3〜4年で6人の新しい絵師を迎えました。一番若い人は20代。まずは受け継いでいく人を確実に育てていきたいと思います」。

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▲次世代への継承を着実に進めている小池ろうそく店

深香さんにはさらに大きな夢もあるそうです。「お酒や農産物が有名な新潟ですが、村上堆朱や糸魚川の翡翠など、工芸品でも県外に誇れるものがたくさんあります。私たちの花ろうそくもその中のひとつに数えられることを目指したい。誰かを想う気持ちから始まった文化だということを多くの人に知ってもらえるように、発信にも力を入れていきたいです」。

<取材後記>

日用品としての伝統工芸が受け継がれていくためには、「作る人」と「使う人」の両方を育てていくことが必要。文明の発達によって生活必需品でなくなったものは、新たな用途を生み出すことも考えなくてはなりません。ろうそくもそんな道具のひとつですが、孝男さんと深香さんが価値を見出したのは、花ろうそくに込められた想いでした。大切な人への贈り物としての花ろうそく。優しくゆらめく炎と光は今を生きる私たちにも癒やしを与え、さらに「花丸ろうそく」という形になって若い人たちとの接点も生み出しています。次世代を担う絵師の育成にも積極的な小池ろうそく店。花ろうそくの炎が照らす未来には、たくさんの可能性が広がっているようです。 

 

 

小池ろうそく店

〒950-0135 新潟県新潟市江南区所島2-2-76 

電話:0120-87-6009(ハナローソク)

 

取材・文章:横田孝優(ザツダン株式会社)

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