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地域の宝が大変身!阿賀町のオニグルミから生まれた、絵本とおもちゃ【後編】

2020.09.19. Sat.

阿賀町 オニグルミ

NIIGATA 越品初となる、「絵本」と「おもちゃ」の企画。その中心となったオニグルミは、阿賀町で長年にわたって親しまれてきた食材で、洋グルミと比べて小ぶりで油分が多すぎず、独特のコクを持つのが特徴です。地域が新たな一歩を踏み出すきっかけとなるオニグルミの物語は、70年前に植えられた一本の苗木から始まりました。

密やかに親しまれてきた、阿賀町の宝

阿賀野川と常浪川が合流する阿賀町は、名峰・麒麟山を望む自然豊かな地域。川の流域にはたくさんのオニグルミの木が自生し、阿賀町の人々は上流から流れてきたクルミの実を拾って、主に自家消費していました。

 

「クルミは立春から210日で収穫できると言われています」と教えてくれたのは、奥阿賀くるみ研究会会長の長谷川正惠さん。8月末から始まり、9月末から10月中旬に最盛期を迎えます。「木を叩いて実を落とす産地もありますが、私たちは自然落下するまで待ちます。そうすることで実の中心までしっかり成熟するんです」。

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▲「クルミで町の過疎化を食い止めたい」と話す長谷川さん

収穫期を迎えると、長谷川さんは毎日オニグルミの実を拾いにここを訪れます。台風などで風が強い時は日に3回来ることもあるそうです。「阿賀町にはさまざまな料理でクルミを食べる文化があります。私も小さい頃から和え物などでよく食べていました」。

 

70年前に植えられた、一本の苗木

長谷川さんが所有するオニグルミの木まで案内してくれました。「70年以上前に私の母が植えたクルミの木です。苗木の状態から、今では大木になりました」。10メートルを超える樹木の枝には、ブドウの房のように固まって膨らんだオニグルミの実がなっています。自然落下した後、1~2週間かけて完熟。黒く柔らかくなった外皮をむき、何度も洗い、3~5日の天日干し、約10日間の陰干しをして、普段よく見る茶色いクルミの姿になります。手間と時間がかかる作業です。

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▲所有する土地の目印として植えられたオニグルミの木

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▲ブドウの房のように実るオニグルミ。見慣れた茶色い実とはだいぶ印象が違います

「パンとおやつ 奥阿賀コンビリー」を経営する柳沼陽介さんは、オニグルミに魅了されて阿賀町にやってきた移住者。お店で販売するパンやお菓子の材料として使うために町の広報誌でオニグルミを譲ってくれる人を募ったところ、柳沼さんを訪ねてきたのが長谷川さんでした。長谷川さんは自身で集めたクルミと他の生産者のクルミを取りまとめ、柳沼さんのもとへと届けています。

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▲福島県出身の柳沼さん。地域おこし協力隊の制度を利用して阿賀町に移住

柳沼さんは「千疋屋総本店」に約10年間勤務し、営業や商品企画などを担当。ローカルの食材や加工品に触れる中で「地方でお店をやりたい」と考えるようになり、パティシエである妻の沙織さんとともに2016年に阿賀町に移住しました。

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▲店名のコンビリーは、おやつを意味する方言「こびり」から。その名の通り、お腹と心を満たしてくれそうなパンやおやつがたくさん

「クルミは洋菓子にもよく使われる食材ですが、ほとんどが外国産。阿賀町のクルミはコクがあるのにクセがなくて食べやすくて驚きました。これならいけると思いましたね」。商店街の古民家を改装した奥阿賀コンビリーは当初、パンとおやつを販売するお店としてオープン。2020年3月にリニューアルしてカフェを併設しました。「ハード系のパンなんて売っていない町でしたから、最初はみんなビックリしたと思います。今では80歳のおばあちゃんがフランスパンを食べてくれる。『この町でこんな香りを感じられるとは思わなかった』と言われたのが嬉しかったです」。柳沼さんが作った奥阿賀コンビリーが、町の風景だけでなく、香りまで変化させています。

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▲パンや焼き菓子、グラノーラなど、お店ではオニグルミを使った商品を多数販売しています

クルミから広がる、阿賀町の未来

オニグルミの絵本が誕生した、そもそもの始まりは2019年。柳沼さんと絵本作家のあだちあさみさんの出会いがきっかけでした。二人はすぐに意気投合し、柳沼さんから阿賀町をテーマにした絵本の制作を依頼。絵本の中身についての意見交換を進めていました。

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▲妻の沙織さん(中央)やスタッフたちと一緒に、柳沼さんは阿賀町の魅力を発信しています

絵本の計画を二人から聞いたNIIGATA 越品バイヤーの長谷川雅史はすぐに反応。「その日のうちに『一緒に絵本を作らせてもらえませんか』と電話でお願いをしました」。ここからNIIGATA 越品の絵本プロジェクトが始動します。何度も打ち合わせを重ね、本物のオニグルミをセットにすることが決定。「オニグルミに触る」というアイデアからおもちゃの企画も立ち上がりました。「おもちゃを作るならナカムラ工房さんにお願いしたい」と長谷川が提案し、柳沼さん、あだちさん、長谷川の3人でナカムラ工房を訪問すると、あだちさんの絵本の読者でもあったナカムラ工房の中村さんは、「いつか一緒に仕事ができたらいいなと思っていました」と快諾。「短い期間で一気に進めたから実現した企画。勢いにのって色々なことが決まりました」と、長谷川は怒涛の日々を振り返ります。

 

様々な人々の熱意と協力から生まれた絵本とおもちゃ。読んで、触れて、遊んで、オニグルミが生まれた阿賀町を感じてださい。

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▲阿賀町の自然について説明してくれた長谷川さんと柳沼さん

<取材後記>

地域で当たり前に親しまれてきたものが、よそ者の手によって生まれ変わる。NIIGATA 越品の取材をしていると、そんな事例に出会うことが時々あります。地域の人にとっては当たり前すぎて、その希少性や価値に気づかない。でも、外からやってきた者にとってはキラキラ輝く宝物に見える。阿賀町のオニグルミもまさにそんな地域の財産でした。オニグルミの文化を守ってきた長谷川正惠さんと、その魅力に惹かれて移住した柳沼さん。そこに絵本作家のあだちさんや、おもちゃ作家の中村さん、NIIGATA 越品が加わり、また新たな扉が開かれようとしています。子どもたちの笑顔を想像して絵本やおもちゃの話をしているみなさんを見ていると、阿賀町の明るい未来を予感しました。

 

 

奥阿賀コンビリー

〒959-4402 新潟県東蒲原郡阿賀町津川3668

電話:0254-92-7100

 

取材・文章:横田孝優(ザツダン)

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