弥彦村 <TAKU GLASS(タクグラス)>

風鈴や器などのガラス雑貨を販売する<TAKU GLASS>。商品を手作りするのは、全国のガラス産地で修行を積んだガラス作家の野澤拓自さん。彌彦神社前の店舗にはたくさんの風鈴が並び、参拝客に美しい音色を届けています。

彌彦神社前、ガラス雑貨のお店

有数のパワースポットとして知られる彌彦神社。そのすぐそばにある土産物店に<TAKU GLASS>のお店は軒を連ねています。カランカランと聴こえてくるのは、軒下で揺れる風鈴の音。赤・青・緑などの色をしたオーソドックスな形のものだけでなく、野菜や海の生き物の形をしたユニークなものまで、目にも楽しいのが特徴です。風鈴の他にも、コップやお皿、置き物、ランプシェードなど、店内はガラスの魅力を堪能できるアイテムであふれています。

彌彦神社の鳥居前に<TAKU GLASS>のお店はあります

ひときわ目を引くのが、ガラスの器に活けられた観葉植物たち。水を吸収するゼリーが中に詰まっているので、週に一度水を上げるだけで簡単に育てられるそうです。

ガラスの器の観葉植物

見た目の美しさを味わうだけでなく、ガラスを暮らしに取り入れるための工夫が凝らされている<TAKU GLASS>のガラス雑貨たち。風鈴は1,000円からと、手に取りやすい価格なのにも驚きました。

作品が生まれる工房を訪ねて

<TAKU GLASS>の野澤拓自さんが、ガラス工房に招待してくれました。

工房は、お店と同じ弥彦村にあります
ガラス作家の野澤拓自さん

この工房は2018年12月から稼働。以前は別の地域で製造をしていましたが、「お店と同じ土地で作りたい」という野澤さんの念願が実を結び、弥彦村の工房が誕生しました。二つの窯は、野澤さんが自分自身で作ったものです。

工房には二つの窯があり、材料として約2,000枚のレンガが使われています

まずは風鈴作りを見せてもらいました。炎が燃え上がり1,300~1,400度に熱せられた窯の中には、さらに「るつぼ」と呼ばれる壺が設置されています。野澤さんの窯には6つのるつぼが入っているため、メインの窯と合わせて合計7つの部屋があり、それぞれ異なる色のガラスを同時に溶かすことができます。

窯の中で溶けたガラスを棒の先端に巻き付けます

溶けたガラスの周りに細かい色ガラスの粒をつけて、再び窯の中へ入れ、色ガラスを溶かします。

色ガラスの粒をつけます

息を吹き込み、ガラスを膨らませていきます。

棒の中心に空いた穴から空気を送り込みます

専用の道具を使って丸く形を整え、「すじ」を入れます。

様々な道具を使って、ガラスを成形していきます

転がしていきながら、穴を作り、広げていきます。

この先端の突起部分を落とします
すると、小さな穴ができました
さらに窯で熱して、穴を広げていきます
風鈴の形ができあがりました

完成直後はまだ700~800度と高温。ガラスは急激に冷ますと弱くなってしまうため、「徐冷炉(じょれいろ)」という窯に入れて、少しずつ温度を下げていきます。

徐冷炉の扉
徐冷炉の温度は500度以上。ここから少しずつ温度を下げ、中のガラスを冷ましていきます

優しさが宿る、手作りガラス

では、ここで問題。今から作るのは、何の形の風鈴でしょうか?

先程と同じく、溶けたガラスを棒に巻き付けます

丸く形を整えた後は、その端に熱したガラスを細くのばしながら巻き付けていきます。

まだ熱いガラスの部分が、このあと大きく形を変えていきます

さらにハサミで切れ込みを入れていきます。

6つに切り分けられました

これをのばしていくと、風鈴が何かの生き物に見えてきませんか?

そう、これは足の部分です

そして、完成。

ゆらゆらとした姿が神秘的な、あの海の生き物です

「クラゲの風鈴」ができあがりました。一般的な風鈴と異なるのは、見た目だけではありません。6本の足はそれぞれ長さや太さが違うため、鳴らす音にも個性が出るそうです。

さらにお皿作りも見せてもらいました。手作りのガラスの器は、底面に小さなくぼみができることが特徴。これを「ポンテ」と呼ぶそうです。

途中までは、風鈴と同じ要領で丸く膨らませていきます
転がしながら広げていき、お皿の形に
大輪の花のようなお皿ができあがりました

涼しげな雰囲気を与えてくれるガラス製品ですが、それと同時に温もりも味わえるのは手作りだからでしょうか。曲線や丸みを帯びた形が、使う人への優しさも宿しているように感じました。後編では、野澤さんがガラス作家として歩んできた道のりや、作品に対する思いについて掘り下げていきます。

TAKU GLASS
〒959-0323 新潟県西蒲原郡弥彦村弥彦3022-4
電話:0256-78-7741

取材・文章・撮影:横田孝優(ザツダン)