糸魚川市 <ao(アオ)>

着心地のよさが特徴的な<ao>のガーゼ服。他のアパレルブランドはやりたがらないような手間ひまのかかる工程によって高品質が実現されています。<ao>が誕生したのは2005年のこと。それまで百貨店向けアパレルブランドの生産請け負いをメインとしていた『美装いがらし』のファクトリーブランドとしてスタートしました。

素材から発想した自社ブランド

1967年に横浜で創業した『美装いがらし』。73年に糸魚川に工場を設け、翌年に本社も移転しました。当初は主に百貨店向けアパレルブランドからブラウスなどの縫製を請け負い、もっとも多い時期には45ブランドのアイテムを製造していました。しかし次第にアパレル業界の価格競争が激化。2000年前後には主要な取引先だったブランド2社が相次いで倒産します。『美装いがらし』専務で、現在は<ao>の社長も務める五十嵐昌樹さんは、社員たちが疲弊していくのを感じていました。先行きが見えない不安の中で、五十嵐さんが打開策として考えたのが「自社ブランドの立ち上げ」でした。

1日で最大400着、年間で10万着の生産能力を誇る『美装いがらし』

「『能がない経営者のもとにいる社員はかわいそうだ』。当時、知り合いの経営者に言われた一言です。ここまでガツンと言われたら、やるしかないと思いました」。経済産業省の自立支援事業に採択されたことがさらなる後押しとなり、五十嵐さんはブランド作りを始めます。ブランドディレクターとして雑誌編集の経験者を招致。二人でブランドの方向性を模索していると、ふと「ガーゼ素材で外にも着ていける洋服があればおもしろい」という発言が飛び出します。当時はまだガーゼ服をつくるブランドはほとんどなく、その一方でガーゼ素材の出荷は少しずつ伸びていました。五十嵐さんは「ブランドの特性を素材に置くこと自体が新しかった。色々な人に反対されましたが、やりきろうと思いました」と語ります。

機屋や糸メーカーの協力を得て、オリジナルガーゼ素材を開発。ブラウスやワンピースなどのデザインは外部デザイナーに依頼しました。縫製やパターン作りに気が遠くなるほどの試行錯誤を重ね、2005年に東京・代官山に直営店を構えて、ついに<ao>がスタートします。コンセプトなどの情報発信、テレビや雑誌でのPRなど、ブランドディレクターを中心とした広報戦略が功を奏し、<ao>は急速に認知を広げました。その後も魅力を伝え続けて徐々にファンを拡大。現在では全国の百貨店やショップで販売されています。

東京の代官山にある<ao>の直営店

リピーターも多い、越品の定番商品

<ao>のガーゼ服は、2016年のNIIGATA越品スタートから人気のアイテム。2着目・3着目を買いに来られるリピーターの多さも特徴です。セールスマネージャーの松永周子は「一度触れば、いい商品であることは一目瞭然。着心地は説明しなくても伝わるんですよね」と、お客さまの反応から感じたそうです。

「<ao>は、お客さまに魅力を伝えやすい商品です」と話す松永

2017年4月に越品ステージが登場してからも、<ao>のアイテムは常に店頭を彩ってきました。デザインが目まぐるしく変わるのではなく、定番アイテムがいつも買えることも<ao>の特徴。常設店舗との相性もいいようです。

五十嵐さんの説明によると、「定期的に新商品も販売しますが、売上の割合でいうと定番が8割で、新商品が2割。定番アイテムも常にアップデートしています」とのこと。基本的にセールやアウトレットをしないにもかかわらず、今まで一枚も商品の廃棄を出したことがないのが、<ao>の自慢のひとつなのだそうです。

誕生から15年が経とうとしている<ao>。ブランドの再構築も進めているそうです。

<ao>は、ICTやIoTといった情報技術を積極的に導入。将来的には店頭で3D計測したデータをもとにオーダーメイドの衣類が作れるシステムも具体化を検討中。さらに、まだ秘密の新ブランドも着々と準備が進行しているとか。「企画は、いつも窮屈な状態で考えるようにしています。最初にガーゼに絞り込んだから、当社にしかできない作り方にたどり着けたんですよ」。<ao>の取り組みは、これからも縦横無尽に広がっていきそうです。

株式会社アオ
ao daikanyama
〒150-0034 東京都渋谷区代官山町10-4
電話:03-3461-2468


株式会社美装いがらし
〒941-0003 新潟県糸魚川市大字中宿942
電話:025-555-2300
WEB:http://bisou-igarashi.com

取材・文章・撮影:横田孝優(ザツダン)