長岡市 加勢牧場
高い栄養価とすっきりした後味が特徴のガンジー牛乳。日本に3つしかないガンジー牛の飼育牧場のひとつが、新潟県長岡市の加勢牧場です。道の駅で販売されるガンジー牛乳のソフトクリームは、1日に1000本を販売することもある人気商品。NIIGATA越品が今年のバレンタインに贈るのは、加勢牧場のガンジー牛乳を使った「ミルクが主役のスイーツ」です。
ホワイト生チョコとクレームアンジュ
バレンタインスイーツとして開発したのは「ホワイト生チョコ」と「クレームアンジュ」の2種類。ホワイト生チョコは、搾りたての牛乳をすぐに生クリームに仕立てて配合。2日後には店頭に並びます。「搾った場所からなるべく移動させない方がいい」と言われるほど、牛乳は鮮度が命。搾りたてのガンジー牛乳を使ったホワイト生チョコは、さっぱりとしたミルク本来のおいしさを存分に堪能できます。
もうひとつのスイーツが「クレームアンジュ」。ガンジー牛乳のチーズを使ったケーキで、シンプルな味わいの奥にミルクの爽やかさを感じることができ、中に詰まったフランボワーズソースの酸味がいいアクセントになっています。もともと加勢牧場の人気商品ですが、今回はソースにチョコをブレンドした特別バージョン。バレンタインらしい魅惑のスイーツに仕上がりました。
「ゴールデンミルク」の異名
ガンジー牛は、英仏海峡に浮かぶガンジー島が原産。毛色はベージュで、白斑があるのが特徴。一般的な乳牛(ホルスタイン種)と比べて、一日に搾れる牛乳の量は約半分で、栄養価と味、希少性から、欧米では昔から「ゴールデンミルク」や「貴族の牛乳」と呼ばれてきました。日本で飼育しているのは栃木県、大分県、そして長岡市にある加勢牧場の3牧場のみで、合わせて約200頭しかいません。
希少性の理由のひとつが、飼育の難しさ。牛乳に含まれる脂肪分が高く詰まりやすいため、優しくマッサージをしながら搾乳する必要があり、どうしても時間がかかってしまいます。近年は繁殖の技術が高くなったため頭数が安定してきましたが、以前はメス牛を増やすことも簡単ではありませんでした。その一方で、優れた環境適応能力を持つガンジー牛。四季の変化が激しい新潟の気候風土でも、体調が著しく悪くなることがありませんでした。厳選した飼料と、この土地特有の良質な水、様々な条件がそろうことで、おいしくて栄養価の高い牛乳がつくられるのです。
ガンジー牛を選んだ酪農家
社長の加勢勉さんは長岡市の稲作農家の出身。18 歳の時に農業高校の酪農研修で北海道を訪れたことが、牧場生活に強い憧れを抱くきっかけになりました。高校卒業後、ホルスタイン種1頭から酪農家としての人生を歩み始めます。
90年代半ば、加勢牧場はホルスタイン種60等を飼育するまでに拡大しました。しかし、その頃には早朝から夜遅くまで働き続ける生活で、頭数と搾乳量を増やし続ける酪農経営に限界が見え始めます。「仕事を減らして収入を維持するためには、付加価値の高い良質な牛乳を生産する必要がある」と考えた加勢さんは、全国から様々な牛乳を取り寄せて研究を開始。そして出会ったのがガンジー牛乳でした。「他のどの牛乳よりもコクがあり、すっきりとして飲みやすい。これなら行けるのでは、と思いました」と、加勢さんは当時を振り返ります。
試行錯誤の20年間
すぐにガンジー牛を譲ってもらえるよう栃木県と大分県の牧場と交渉をしましたが、門外不出と断られてしまいます。一度は諦めかけましたが、群馬県の伊香保グリーン牧場で観光用のガンジー牛が飼育されているという情報を得て、何度も足を運びました。そうした熱意が実を結び、1997年に念願のガンジー牛が加勢牧場にやってきます。その牛の名前は「みちる」。今加勢牧場で飼育されているガンジー牛はみんな、みちるの子孫なのです。
頭数が少なく、限られた牧場でしか飼育されていないガンジー牛は、飼育のノウハウが広まっていません。加勢牧場は約20年間の試行錯誤を経て、ようやく1日の搾乳量を安定させられるようになってきました。加勢さんは現在の牧場がほぼベストな状態だと考えているそうです。「ガンジー牛乳は、最高の牛乳。ジェラートやチョコをおいしいと思ったら、ぜひ牛乳も飲んでもらいたいですね」と加勢さんは笑います。
牛乳が主役のスイーツは、実はパティシエ泣かせ? 後編では、レシピ開発の裏側をご紹介します。
有限会社ケーエスファーム
加勢牧場
〒949-4505 新潟県長岡市根小屋325
電話:0258-74-2863
直営店『加勢牧場-わしま本店-』
〒949-4052 新潟県長岡市黒坂 615 いやしの郷内
(国道 116 号線 和島バイパスのすぐ脇)
電話:0256-78-8866
営業時間 :10時 ~ 7時
定休日:毎週火曜日
取材・文章・撮影:横田孝優(ザツダン)