津南町 雪椿(ゆきつばき)

魚沼産特別栽培コシヒカリ「雪椿」。土作りから精米まで一切妥協することなく作られたこのお米は、魚沼産コシヒカリの中でも0.003%しか存在しない希少性も特徴のひとつです。「魚沼産コシヒカリ」というだけで品質の高いお米をイメージしますが、「雪椿」はその中でも何が特別なのでしょうか。

ストーリーを大事にしたかった

「お米はどこで作るかも重要ですが、誰がどんな風に作っているかも大事。雪椿は、魚沼産という言葉だけでは伝わらないストーリーも大事にしたいんです」と語るのは小林善仁さん。雪椿の販売とPRを展開する越後雪椿産業株式会社の新潟営業所所長兼営業部長という肩書きを持ちながら、雪椿とは別のお米を生産する兼業農家としての顔も持っています。

雪椿を世界中に紹介するため、海外へ出張していることも多い小林さん

作るまで、ではなく、届けるまで。一般的に販売されている「魚沼産コシヒカリ」は、確かに魚沼で作られたコシヒカリではあるものの、袋の中身が全て同じ農家の米とは限らず、ブレンドされていることが少なくありません。どれだけこだわって米作りをしても、それでは意味がないという思いから生まれたのが「雪椿」というブランド米でした。

WEBサイトでは、雪椿のお米が食べられるお店を紹介。そのほとんどがミシュランの星獲得店です

流通量の約7割がレストランやホテルで提供されているのも、心を込めて届けたいという思いから。米作りのストーリーに共感し、味に納得した料理人たちが雪椿を選んでいます。その人気は国内にとどまらず、海外の有名店からも指名されるお米となっています。

米どころ新潟の百貨店から

新潟伊勢丹で雪椿の販売をスタートしたのは2017年の7月。当時キッチングッズやリビング用品の担当だった越品バイヤーの長谷川は「食器や調理器具は食品と一緒に紹介してこそ、魅力を十分に伝えられるはず」という狙いから、ふさわしい食品の発掘に苦心していました。

NIIGATA越品バイヤーの長谷川雅史

「新潟県唯一の野菜ソムリエ上級プロの資格者である清野朱美さんに相談したところ、紹介してもらったのが雪椿でした」

新潟は言わずと知れた米どころ。全国で最もお米に厳しい地域といっても過言ではありません。お客様に喜んでもらえるかどうか。新潟の百貨店として雪椿を紹介することは一種の賭けでもありました。

「清野さんに炊き方を実演しながら紹介しました。お客様からはおいしいと言ってもらえただけでなく、雪椿のストーリーにも共感してもらえましたね。本当に良いものを紹介すれば、お客様に喜んでもらえるという手応えを得ました」

一番伝えたかったのは、自然の豊かさ

米作りにおいて忘れてはならないのが、水。ここ津南町は冬には3m以上の雪が積もる豪雪地帯。大量の雪は豊富なミネラルを蓄えた湧き水となって、田んぼを潤してくれます。

見玉不動尊を訪ねました。本堂へと登る石段の脇には、湧き水によって作られた7つの滝を見ることができ、清涼感を与えてくれます。

目の健康へのご利益があるとされる見玉不動尊
絶え間なく流れる湧き水が参拝者を迎えてくれます
ペットボトル入りの湧き水もあります。この水で雪椿のお米を炊くと、さらに旨みが引き立ちます

「もう一ヶ所、お見せしたい場所があるんです」と小林さんが案内してくれたのは、新潟の橋50選にも選ばれている吊り橋「見倉橋」。眼下に広がる中津川渓谷の景色は、不安定な橋の上に立つスリルを忘れるほど美しく広がっていました。

映画のロケ地にもなった見倉橋
紅葉の季節には燃えるように色づく景色が楽しめるそうです
川底が見える透明度ですが、これでも前日の雨で普段よりも濁っているとのこと

「お見せしたかったのは、この地域の豊かな自然です。人の手も大事ですが、この環境がなくてはおいしいお米は作れません。そのことを知ってもらえたら幸いです」

農家の情熱やこだわり、お米を育む環境、その土地で暮らす人々の営み。雪椿という商品ひとつにも、その背景には無数のストーリーや思いがある。それらをお客様に伝える語り部となることがNIIGATA越品の役割であることを再確認し、私たちは津南町を後にしました。

帰路の途中で野生のカモシカに遭遇

越後雪椿産業株式会社
新潟営業所:〒949-8201 新潟県中魚沼郡津南町大字下船渡戊306-5
電話:025-761-7407


取材・文章・撮影:横田孝優(ザツダン)