津南町 雪椿(ゆきつばき)

「新潟県を代表するお米になってほしい」という思いを込めて県木の名前を与えられた、魚沼産栽培コシヒカリ「雪椿」。作り手たちの願いに応えるように、品評会で金賞を受賞し、ミシュランの星獲得店で使われるなど、高い評価を受けるお米となっています。

水、土、栽培。全てにこだわって育てられた「雪椿」

ふっくらと米粒が立ち、ほどよい甘さと粘り。どんなおかずとも相性がいい万能選手で、やはり白ごはんで食べるのがおすすめ。そんな雪椿が育つ環境を知るために、津南町を訪ねました。

雪椿を育む、水と土と空気に触れる

2018年9月12日。今回の訪問の目的は、産地の見学だけでなく、雪椿の稲刈りを体験すること。NIIGATA越品の販売スタッフたちも参加しました。

一面に広がる黄金色の稲たち。今年もお米が実りました

日本最長の河川である信濃川とその支流によって作られた「河岸段丘」。津南町のシンボルである特徴的な地形を活かした雪椿の稲田は標高約450mの高さにあります。昼夜の寒暖差によって高原野菜が甘みや旨みを蓄えるのと同様に、適度な厳しさを持つ環境はお米にとってもおいしさの源となるそうです。

稲刈りに汗を流す越品スタッフたち

35℃を超える猛暑日を何度も観測し、台風や豪雨が日本列島を襲った2018年の夏。幾度の試練を乗り越え、雪椿の稲は今年も大きな粒を実らせました。使い慣れない鎌を手に、さっそく稲刈りに挑戦。稲の根元に鎌の刃を当て、引くように力を入れて刈っていきます。なかなかコツが要る作業です。

「ザクッ、ザクッ、ザクッ」
農家の桑原さんを観察すると、まず音が全く違います。心地よいテンポと、芯を捉えた響き。無駄のない動きと力加減で作業をしていることが、音を聞くだけで伝わってくるようでした。

熟練の手から奏でられる「ザクッザクッ」という音が心地よく響きます

機械が入れない田んぼの四隅を手で刈り取ると、後はコンバインで一気に収穫していきます。

あっという間に刈り取られていく田んぼ。さすがコンバインです

澄んだ空気、清らかな水、肥沃な土。短時間の稲刈り体験でしたが、雪椿が育つ環境を自分たちの五感で知ることができました。「次は田植えに来たいね!」と声を揃える越品スタッフたちでした。

乾燥も精米も、当たり前の方法がベストとは限らない

稲刈りの後は、精米と貯蔵の施設を見学させてもらいました。

収穫した稲は、まず乾燥させてから籾(もみ)を取ります。一般的な乾燥機は火力を使って高温で乾燥させるのですが、熱によって食味(おいしさ)が奪われてしまうのが弱点。そこで、雪椿は除湿した風を送り込むことで乾燥させています。時間はかかりますが、味を保ったまま籾を取ることができる方法なのです。

籾を取って玄米にするための機械
床にある投入口から籾を入れると、後ろの機械の中へと移動していきます

籾の殻を取り除いたものが玄米です。玄米を包むぬか層を除去することを精米といい、この工程によって私たちが普段口にする白米になります。雪椿では、精米についても通常と異なる方法を取っています。熱を抑えながら異物や着色米などの不純物を弾き飛ばす最新の精米機を導入。精米にかかる時間は長くなりますが、食味の低下を防ぐことができます。

精米しながら不純物の除去もできる精米機です
精米されたお米を計量しながら袋の中へ

お米は殻やぬか層を取り除くと、劣化のスピードが速くなってしまいます。そのため玄米の状態で保管するのが一般的ですが、雪椿では籾のまま貯蔵しています。玄米よりも体積が大きいので広い貯蔵施設を必要としますが、味を優先した保管方法を選んでいます。

貯蔵庫。これだけの巨大な設備は、県内でも数えるほどしかないそうです
底まで数メートル。覗きこむと足がすくみました

土をいたわる。土を大切にする

雪椿では土作りにおいても一線を画す方法を取っています。通常、秋に稲刈りが終わると、田んぼはそのまま、もしくは野焼きをして冬を越します。田植えの準備をするのは、春が来てからです。

雪椿では稲刈りが終わったらすぐに、国産の有機質の肥料を使って土作りを始めます。津南町では3m以上の雪が積もりますが、その下で土はじっくりと栄養を蓄え、春を迎えます。雪解け後にも土作りを続け、田植えに向けた備えに余念がありません。良いお米は、良い土壌から。通常の約4倍の経費と手間をかけて、雪椿のための土は作られています。

収穫の直後から、来年に向けた土作りが始まります
同じ土地で繰り返される稲作という営み。土を大切にする気持ちが、おいしいお米を育てます

あらゆる条件で極限までこだわり抜かれた雪椿。それでもまだ、おいしさの理由は語り尽くされていません。後編へと続きます。

越後雪椿産業株式会社
新潟営業所:〒949-8201 新潟県中魚沼郡津南町大字下船渡戊306-5
電話:025-761-7407

取材・文章・撮影:横田孝優(ザツダン)