TOKYO解放区デザイナー“知る”インタビュー Vol.3
伊勢丹新宿店では、2月26日(水)より、作り手の哲学に触れてお客さまにファッションを選んでいただくことをテーマにしたニューカマー企画「TOKYO解放区 “知る”」を開催いたします。店頭にはクリエーションの過程に「哲学」のある4ブランドとして〈koll(コール)〉、〈RURI.W(ルリ)〉、〈SREU(スリュー)〉、〈BELPER(ベルパー)〉を展開。
今回は、これら4ブランドをよりたのしく知ってもらうための連載インタビュー第3弾。2019年10月、渋谷・セルリアンホテルのカフェラウンジ「坐忘」でデビューを飾ったブランド〈SREU(スリュー)〉。仕立て屋のサーカスの立ち上げメンバーで「CINEMA dub MONKS」を主宰する曽我大穂さんらによる演奏を背景に披露されたランウエイショーは、多くのジャーナリストの心を鷲づかみにしました。
その背景にあるのは、リメイクやアップサイクルという概念をさらに超えた、“Ready-made(レディメイド)”というコンセプト。その哲学について、TOKYO解放区バイヤーのちばと一緒に伺いました。
――—まずは、植木さん(デザイナー)と米田さん(ディレクター)の出会いについて教えてください。
米田さん:学生時代の同級生で、3年程前、うちに入ってもらったのが始まりです。
植木さん:最初は店舗管理でした。もともとユニクロの店舗でVMDとかを担当していたこともあったので。その店舗でリメイクの商材を作って販売したのがブランドスタートのきっかけです。店舗の傾向を考え古着の買いやすさとレースの可愛らしさをミックスしたガーリーなニュアンスにしたらいいのでは、とサンプルを作り始めました。
———お2人ともBFGU(文化ファッション大学院大学)ご出身でいらっしゃいますが、植木さんがファッションに目覚めたのはどんなことからだったんですか?
植木さん:もともと単なる服好きな子どもで、高校の時は『CUTiE』とか、『smart』とか、『Boon』とか読んでいました。でも、地元では雑誌に出ている服がどこにも売ってなかった。キャンスパ(キャンディストリッパー)とか好きだったのですが、Tシャツが当時5,000円もする。高校生には買えないですよね。高い!買えない!じゃあ、作ってみよう、と思い立ちました。最初はたまたま家にあった布で。シャツを作り、その後も誰からも習うことなく服を縫っていました。今思い返しても、夢中になるものに出会えて良かったな、と思いますね。
———「フルギニレース」から「SREU」のブランドデビューに至ったきっかけについて教えてください。
米田さん:「フルギニレース」は展示会に出展すると意外に評判が良く、東京以外でも、パリや上海、台北の展示会にも参加するようになったのです。香港や上海、深圳、広州、ソウル、あとロシアとか卸先が決まって、日本でも卸をしていました。ある時から、日本と海外での売れ筋に違いが見られるようになっていったのです。
日本はリメイクブランドとして見られて、しかも、どちらかというと甘めなニュアンスが人気です。だけども、パリではリメイクかどうかよりも、その服のデザインの良さの方が優先される。特に、ガーリーなアイテムよりは、デザイン性の高いアイテムの反応が良いです。
そこで、今後の方向性として、国内での卸を中心とするか、海外展開を中心にするのか、どちらかに絞ろうと。
植木さん:悩みましたね。悩んだ末、リメイクブランドじゃなくてファッションブランドになろう、ブランドとして1つ上がっていこう、という話をしました。まずは海外での展開を拡大して、ブランドの評価を高めたい。
———それで、「SREU」としてショーもやろうということになったんですね。
米田さん:ちょうど時代的にも「サステナブル」っていうムードが高まっていたので、10月のタイミングで開催できれば、と思いました。逆にこのタイミングで出来ないのであれば、やらない、とも。
2019年の頭に、PR01.さんからの紹介で、演出のBONさんとお会いして。そこで、ある程度は気持ちが固まっていました。そしてこのタイミングで、名前も変えようと。海外では「フルギニレース」と言う名前だと覚えられにくいので。
植木さん:そこからが大変でした。これまでのサイクル通りのサンプル製作、量産に加えて、そこにさらに〈SREU〉へのリブランディング、しかもショーもやる。ただただ、ひたすら、ミシンと格闘する日々でした(苦笑)!
———ミシンに向かっているときには何か音楽とか聴いたりされたんですか?
植木さん:TBSラジオだけです。「Radiko」 で1日中かけっ放し。星野源とかバナナマンとか、ニュースとか(笑)。ひたすら手を動かしているので、なんとなく、いろんな情報が流れている状態というのが心地良いです。
———「SREU」がブランドとして大事にしているのはどんなところですか?
植木さん:ベースとなる服はすべて国内外から集めた古着で、すべてが1点もの。それぞれの服と向き合って、それぞれの特徴を生かしつつもプロダクトアウトするという意味では、“Ready-made”というスタンスです。それにはベースを整えることが大事で、古着ですから、いろんなコンディションのものがあるのですが、きれいなものを使うこと、きれいな状態に整えること。そして、当たり前のことですが、ていねいに縫うこと。あとは、そうですね、既にリメイクブランドとして展開している他のブランド群との差別化はしたくて、デザイン的にもきれいに仕上げることとかでしょうか。
米田さん:大手のブランドほどしているわけじゃないのですが、ある程度はリサーチもしています。ドレッシーで光沢がある方がいいとか、大人っぽいツヤっぽさとかエレガントな質感があった方がいいとか、パリでの展示会は本当にいろいろ勉強になりました。例えば、ラックでかけたときにどう見えるか、逆にどう見せるか、とか。
植木さん:そうそう、最初はトップスばっかりになっちゃって。私、基本的に気づくとトップスばっかり作っちゃうんです(笑)。しかも、背面にデザインするのが好きなので、ラックにかけると横から見た時は普通に見えちゃう。今はラックにハンギングした時のことも考えながらデザインしています。
———デビューコレクションである2020SSのシーズンテーマは?
米田さん:〈SREU〉は基本的にシーズンテーマを設けないつもりなのですが、今回は、これからファッションブランドとしてこの業界にしっかり向き合いたいという意思を込めて“ENTER”としました。
植木さん:アイデアベースは海外営業も含めて三人で話し合って、それを元に私がサンプルを作って、それを米田が「これを世に出す意味はどうかな」「もっとこういうアイテムを増やそう」とチェックする、という手順で制作しています。
———ファッションにおける信条のようなものはありますか?
米田さん:ブランドにより様々だとは思いますが、属性としてファッションデザイナーはアーティストじゃなくてプロダクトデザイナーに近いのかなと考えています。そういう意味では、リメイクという手を動かすことが他のブランドよりも多い中、デザインから量産まで一貫してアトリエでプロダクトアウトできているのは、一つの強みです。
植木さん:基本的に私はただ服を作っているだけで、なんだか工場みたいな感じです(笑)。今日も朝からずっとさっきまでミシンを踏んでいました。これからアトリエに帰ってまたミシン、、、(苦笑)。
米田さん:最終的には“リメイクしている感”がなくなるのが理想です。お客様がいいなと思って服を手にして、それがたまたまリメイクブランドの服だったと言う。そのためにも、ブランドとして少しでも力をつけていきたいと思っています。
(ライター:“Kumiko Takano, ACROSS”)
TOKYO解放区 “知る”
TOKYO解放区によるニューカマーのご紹介の企画として、「TOKYO解放区 “知る”」を開催いたします。「知る」ことにより、おぼろげなものが実態を持つ。毎日すごくたくさんのことを考えながら生活している人でさえ、お買い物という行為になると、一気にたのしい!かわいい!と直感的に進めていきがちな中、いつもよりも、少しだけ、商品やデザイナー、クリエイションに対する姿勢などいろいろなことを『知って』買う。そういうお買い物をしていただくのも素敵な体験になるのではないかと思っております。これからのTOKYOのファッションシーンを彩る4ブランドを中心にコラボレーション商品等も多数ご用意しておりますので、ぜひご来店くださいませ。(TOKYO解放区 バイヤー ちば)
お取り扱いブランド:〈koll(コール)〉、〈RURI.W(ルリ)〉、〈SREU(スリュー)〉、〈BELPER(ベルパー)〉、〈nana kamio(ナナカミオ)〉、〈gui flower(グイフラワー)〉、〈lumgo,se(ルミゴーシェ)〉、〈Maya Numata Graphic(マヤヌマタグラフィック)〉
会期:2月26日(水) ~ 3月10日(火)
場所:本館 2階TOKYOクローゼット RestyleTOKYO内
TOKYO解放区「知る」会期中には、 三越伊勢丹アプリをダウンロードしていただいた先着500名のお客さまに、「TOKYO解放区2020年ロゴ入り」の〈Maya Numata Graphic(マヤヌマタグラフィック)〉によるステッカーをプレゼントいたします。
※なくなり次第終了となります。
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