伊勢丹オンラインストア
2月28日(金)の午前10時から72時間限定で、伊勢丹オンラインで20年秋冬コレクションを受注販売するデザイナーのツモリチサトさん。そのサステナビリティを意識した新体制ビジネスでも注目を集めるツモリさんに今の想い、そして新しいコレクションなどについて語ってもらいました。
―― ツモリさんが独自でブランド展開を始めた経緯を教えてください。
去年、国内の販売が一旦終了し、自分でやろうかなと考えていた時に、だったらよりダイレクトにお客さまと繋がった方が私の思いが伝わりやすいのではないかと思い、今のスタイルに行き着きました。国内の店舗は閉めたので、違う販売方法を考えないなと。ロシアや香港、台湾など海外では、まだその各国の方がオーナーになって運営されているお店がありまして、特にロシアのバイヤーが私の服にはファンが多いからと続けて欲しいと言ってくれて。ロシアに実際に行って、バイヤーと話した時、「ブランドを辞められたら本当に困る!僕たちも手伝うから継続して欲しい」と強く後押ししてくれました。そんな声もあって自分たちで新しいやり方を模索しながら、続けていこうかと。でもね、実は「ブランドをやめる」という考えは最初からなかったの。だって、やめるのは“面白くない”でしょ?私は元来、“面白い”ことが大好きだから(笑)。それで、20年春夏シーズンから、私たちのショールームでサンプルを見てもらい、オーダーしてもらうと言う販売方法に辿り着きました。あまり広げる気はなく、なるべくできる範囲で、私の服を喜んで着てくれる人たちの手に届けばいいと考えています。結果的に無駄な服を作らず、セールや廃棄なども無い、時代に合ったサステナブルなものづくりブランドになれたのかなと思います。
―― では、2020年秋冬のコレクションについて聞かせてください。
昨年、神戸で『不思議の国のアリス展』を見る機会があって、この世界、面白いなと思っていたんです。その後、イギリスに行った時に飛行機の機内でジョニー・デップ主演の映画『アリス・イン・ワンダーランド』を観て、あ、このテーマ、やっぱりいいな、面白いかもと思ったのがきっかけ。でも、そのままだとつまらないから、昔のアリスじゃなくて、カラフルで森や自然を感じさせるアリスの世界もいいじゃない?と。そこで森の絵から、アイデアを広げて行きました。たくさんの動物に囲まれたカラフルな森にいるアリス。そしてアリスと言えば、アイコニックなトランプのモノトーンの世界。どんどんとアイデアが膨らんでいきました。
―― 独自でブランド運営も担うことで、これまでと変わってきたことは?
私がやっていることはこれまでと同じ。何ら変わりはありません。だけれど、スタッフの人数は減ったので、アシスタントなどの私以外の人たちはとても大変だと思う(笑)。私は、もともと作りたい気持ちが強くて、どんどんアイテムが増えていくんですよ。それは自分たちがブランド運営をしている今も“作りたい病”が止まらないので、周りは大変でしょうね。コレクションの規模が小さくならない(笑)。デザインしてたら、あれも、これもとついつい増えていってしまうんです。
―― ここ数年、ファッション界でもサステナブルへの関心が高まっていますが、どうお考えですか?
今の私たちのビジネスの展開方法は、サステナブルだなと。コレクションをデザインし、サンプルを作る。それをお客さまたちに直接、見ていただき、オーダーをしてもらう。この方法をとることで、過剰在庫が出ません。必要な服を必要な枚数だけ生産することが可能になります。何ヶ月か先にはなるけれど、その服が欲しい方の元に確実に、気に入った新作が届くと言う仕組み。そして、私は昔から、ポリエステルなどに代表される化学繊維、石油が原料の素材が好きじゃなかったんです。もちろん、機能面でポリエステルを用いることが避けられない時もありますが、できればポリエステルは使わないようにとね。ポリエステルを洗った時に出るマイクロファイバーが海に流れ出て、海の環境を壊していることを知ったときに、私はずっとポリエステルが苦手だと思っていたけど、あれは間違えてなかったのね!と確信しました。扱いやすい素材だし、価格も安いしと浮気をしたこともあったけど、やっぱりずっとポリエステルが好きじゃないと思っていた自分の感覚は信じてよかったんだと。もともと、石油とかペットボトルとか、そう言う類のものは、肌に触れる服には適した素材じゃないと思っていたんです。ウールとかシルクとかコットンとかの天然素材に包まれていると体が喜ぶと思うわけ。肌に優しいし、着てて楽チンだし。そういうものを作って行きたいと潜在的な感覚で素材を選んでいたんだと思う。自分が身につけていて、気持ちいい素材のものしか、お客さまに提供したくない。そんなこともあってか、不思議と化学繊維には昔から興味がありませんでしたね。
―― 素材選びもそうですが、心を体も喜ぶ服を作るのが理想だと。
そう。服は簡単にちゃちゃっと作れてしまう部分もある。でも、しっかり人の手を使って作られたものは違うんです。プリント一つとっても、手書きのイラストとパソコンで描いたものは違うから。絵にしろ、刺繍にしろ、手から産まれたものには圧倒的なパワーがあるんです。とはいえ、忙しい時は私もiPadを使ってイラストを描くこともあるけど(笑)。それをプリントアウトして、手描きで色を塗ったり、絵を加えていくと、とてもパワーアップするんですよ。絵が喜んでる気がする。絵は、筆を持つと自然に浮かんできます。絵は悩まず悩むことなく描けるタイプですね。そんな絵や素材が持っているような力が服にも必要だと思う。天然素材の力、そして人の手で作業するからこそ生まれる力っていうのは本当にあって、それを少しでもお客さまにお伝えできたらいいなと。私自身は今、ペットボトルは買わないようにしています。とりあえず、できることから取り組んで、次の世代にあまり傷んでない地球を渡さないといけないですからね。
―― お客さまへのメッセージをお願いします。
私は今も昔も、好きなことを続けさせてもらっています。最近、自分って子供っぽいなと思うことがしばしばあるんですが、これからも面白いことをお客さまたちと一緒に、私も楽しんでいきたい。面白がって何年も着てもらえるような服を作っていきたい。私自身、面白くないとやっている意味がないじゃないと思うんです。何事も面白がらないと!今、お客さまと近くであう機会も昔より増え、これが似合うね、こっちもいいんじゃない?みたいな会話を直接、させてもらうのも新鮮だし、何より楽しいんです。あとは、私の過去の作品、そして旅先で見つけた可愛いものたちがいっぱいあるんですけど、それらのものを皆さんにも見てもらえるような展覧会なのかイベントなのか、そんな一緒に楽しめる何かを将来、企画できたらいいなとも思っています。
伊勢丹オンラインストアのリンクはこちら↓ ※2月28日(金)午前10時より販売開始
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