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引き算と足し算を駆使して、感動を生み出す<タケダ>の金属雑貨【前編】

2023.11.17. Fri.

燕市 タケダ

滑らかな肌触りと、心地よい重み。装飾を極限まで削ぎ落した機能美。燕市で金属加工業を営む<タケダ>の製品は、NIIGATA越品の中でも一際目を引く逸品揃いです。切削加工技術を駆使して、ユニークな金属雑貨を生み出している<タケダ>の工場を訪ねました。

「花を生ける」を、もっと身近に

おちょこのような見た目をした、手のひらサイズの金属の筒。水を入れるのではなく、水に入れる一輪挿し「HANAKUBARI」です。「底面に設けた隙間から水が上がり、外側から中の水位が分かる仕組みになっています。好きな器に入れて自由に雰囲気を変えることができ、剣山を使うよりも気軽に花を生けられる新感覚の花器です」と教えてくれたのは、企画開発部部長の高地雅之さん。開発のきっかけは、コロナ禍に注目を集めたフラワーロス問題。新しい花の飾り方を提案することで、生花に親しむ人を増やそうと考えたのです。そのデザイン性や社会課題へのアプローチが高く評価されて、ニイガタIDSデザインコンペティション2023で最高位となるIDS大賞を受賞しました。

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▲本体の重みで一輪でも程よく自立。2つ重ねれば背の高い植物を飾ることもできます

燕市に本社を置く株式会社タケダは、切削加工を得意とする金属加工メーカー。代表取締役を務める武田太一さんの父が、昭和38(1963)年に創業しました。「下請けの部品加工から始まった会社ですが、父の代から『完成品を作りたい』という思いがありました。そこで立ち上げたのがTAKEDA DESIGN PROJECTです」と武田さん。現在は、7組のプロダクトデザイナーの協力のもと、9ブランドを展開。「削る」「磨く」という切削加工の技術的な特徴を活かし、シンプルな機能美を突き詰めたデザインの金属雑貨を製作しています。

 

切って、削って、磨く。引き算の技術

切削加工とは、文字通り金属の塊を切ったり削ったりすることで、用途に合わせた形へと加工する技術。作業効率の向上や新しい加工技術の導入に意欲的な同社では、社員数の約2倍に及ぶ80台以上の機械を所有しています。武田さんに工場の中を案内してもらいました。

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▲整然と切削加工機が並ぶ工場内

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▲複合旋盤と呼ばれる加工機の一つ。これから、中央に見える金属の円柱を加工していきます

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▲回転する金属の円柱に刃物を当て、入力したデータに合わせて不要な部分を削り取っていきます。撮影用に見えやすくしていますが、実際は油を噴射しながら削ります

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▲加工が終わった状態。機械の中には形状の異なる刃物がいくつもセッティングされており、複数の工程を一度にこなします

システム制御が可能な最新の機械を導入することで、1台で完結できる加工の幅が広がり作業負担は減少。しかし、オペレーターの経験とノウハウが必要であることは今も昔も変わらないと言います。「データを入力すれば、最初は図面通りの形ができあがりますが、量産するとなると機械任せでは不十分。仕上がりの正確さや美しさを保つためには、刃物を変えたり削る時間を調節したりと、加工する金属の強度や特性に合わせた微調整が必要になります」。

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▲金属を扱う加工場ですが、小さな部品の加工も多いため、活躍するオペレーターは性別を問いません

下請けの部品加工から技術の商社へ

同社が創業当初に請け負っていたのは、ミシンに使われる小さな部品の切削加工でした。地域の工場からの依頼に応えながら機械の台数を増やし、早い段階から全国各地の展示会に参加して技術力をPR。新幹線の開通で首都圏へのアクセスが便利になると県外からの発注も増えました。現在では、県外の企業が取引先の約90%を占めます。「タケダは切削加工一筋で60年。その強みは細かな加工を得意とする技術力と、機械の癖を熟知しているからこそ出せる精密な仕上がり。そして、地域の工場とのネットワークです」と武田さん。展示会で切削加工以外の技術を要する相談を受けたことをきっかけに、2002年に総合加工部を設立。金属加工に限らず、燕三条地域に密集しているさまざまな工場と連携する体制を構築しました。

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▲切削加工の技術力を知ってもらおうと製作したサンプルの数々。金属をミリ単位で削ることができます

社内で完結するのではなく、会社の垣根を越えてチームでものづくりをする風土を育んでいった同社。しかし、それでもまだ下請けの部品加工やOEM製品の製造のみ。「自分たちで完成品を作りたい」という父から受け継いだ夢が動き出したのは2008年のことでした。リーマン・ショックによる情勢の変化が武田さんの背中を押し、現在、企画開発部部長を担う高地さんへオファーを出します。高地さんが入社してすぐにファクトリーブランド「TAKEDA DESIGN PROJECT」の開発が始まりました。

 

後編では、TAKEDA DESIGN PROJECTの軌跡と、タケダのこれからについてご紹介します。

 

 

株式会社TAKEDA

〒959-1201 新潟県燕市灰方664番地(HEAD SQUARE)

電話:0256-64-7420(企画開発室)

 

取材・文章:鵜野梨奈(ザツダン株式会社)

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